地域・市民価値の高い豊かな暮らしの創造を目指して
地域課題を最先端の技術を使って実施する「まるごと未来都市」であるスマートシティの取り組みが進む中、私たちは、ライフスタイルデータを広く社会にオープンにし、地域や市民の価値を高め豊かな暮らしを創造していくことを目指して、オプトイン方式で官民データ連携をしていくスマートシティ会津若松に参画します。これからも会津若松をはじめとした多くの地域のみなさまと共に、真に地域共生につながるような日本のモデルケースを作っていくことで、日本の「Society5.0」の達成に向けて貢献してまいります。
データがつくる未来の新しい都市とは
会津若松スーパーシティ構想で都市空間デザインアドバイザーを務めるスペースコンポーザーの谷川じゅんじ氏と、「NEW NEIGHBORHOOD 都市の未来とネイバーフッド」を特集テーマとした最新号を2021年6月に上梓された『WIRED』日本版 編集長の松島倫明氏が、データやテクノロジーをもとに、一人ひとりが幸せを感じることができる新しい都市、そして人々と地域の豊かな暮らしの実現の可能性についてお伝えします。 (取材日:2021年7月23日)
対談:書き起こしをよむ谷川じゅんじと松島倫明が語る
「データがつくる未来の新しい都市とは」
デジタルテクノロジーによって物理的な場所を超えてもつながりが強くなる世の中へ
谷川 『WIRED』の最新号「NEW NEIGHBORHOOD 都市の未来とネイバーフッド」はどういう特集ですか。
松島
スマートシティの動きはここ何年かずっと動いてきていますが、そこにパンデミックが起こったとき、僕らは都市の機能に何を求めるのか、都市の欲望的なものが何に変わっていくのかをまとめました。
ネイバーフッドとは、日本語では「ご近所」いったイメージだと思いますが、この特集では二つの意味を持たせました。一つは、デジタルテクノロジーによって、より人々の近隣のつながりが強くなっていくのではないか、ということと、もう一つは、物理的な場所を超えても、人と人とのつながりを持てるようになるのではないか、ということです。
谷川
なるほど。仲間とも違って、物理的なご近所さんでもなく、ライフスタイルと思想と行動が全部、何となくつながって共鳴できる人たちのことでしょうか。
最近は、ワーケーションや多拠点の生活といったように、都市部に基点を置きながらも、自然が多い所で暮らす人も増えていますね。
松島 パンデミックによって、2拠点とか分散的に暮らせるようになってきました。だからこそのネイバーフッドの大切さが、今、文明的に寄り戻しが来てるように思います。
自己肯定感の高い社会は、どのような都市にどのように作られていくのか
谷川
最近、日本がこれからどうなるんだろうということがすごく気になりだして、いろいろ調べ始めたら、単純に人口は減っていく、高齢化も進む、生産人口も減る、少子化も止まらなくなるということに改めて気づきました。そのときに、若い人たちの生活のスタイルと豊かさは、今までとは違う方向に行くのではないかなという感覚があります。
今、一部の方たちが「GDW(Gross Domestic Well-being)という言葉を使い始めています。幸せであるということを、世の中の物差しとして大事にしようよ、ということです。この話を聞いた時に、自己肯定感が高い社会っていうのは、すごくいいなって思いました。どういうふうに社会のインフラの整備を整えていけば、自分は幸せですよ、と言える自己肯定感の高い社会がつくれるのか。最近の自分の仕事の問いになってきています。
松島 とても面白い問いですね。
谷川
どういうことをやったら、幸せな人の数が増えるのか。これは多分、都市部の暮らしが好きっていう人には、そういうライフスタイルもありますし、自然の近くで生活をしたいと思う人には、そういうライフスタイルもある。
ローカルやメンバーシップといったものから、コミュニティとネイバーフッドのようなものへ、緩やかに移行していくことが想像される時に、そこをさらにサポートするのに、テクノロジーの力は、有益に作用するんじゃないかな、と思っています。
松島
おっしゃるとおりだと、僕も感じています。
これからはハードウェアとしての都市とソフトウェアとしての都市がますます分離していくのではないでしょうか。もともとのハードウェアの都市に、ソフトウェアの都市機能がどんどんアップデートされて豊かになっていく。あるいは、どんどんパーソナライズされていくことで豊かになる。
ウェルビーイングを高めるための一つの重要な指標は、どれだけの自立性を自分たちが担保できてるかということだと思います。
新しくアップデートされていく都市はネイバーフッドとすごく親和性が高く、近隣単位や街単位でネイバーフッドと一緒にアップデートすることができれば、とても面白いんじゃないでしょうか。
谷川 そうですね。ネイバーフッドやコミュニティなどは、発想がとても利他的で、自分にとっての損得を置いといて、仲間やこのコミュニティのために自分の知見をどう生かせるか、ということのほうが、結果的に関わった人の自立心が上がっていくと思いますし、自己肯定感も高まると思います。自分がみんなの役に立てた、ありがとうって言われる。それで満足、と。
まさに今こそが、テクノロジーとデータを掛けあわせ、
多くの人が幸せだと感じる社会基盤を整備するタイミング
谷川 松島さんは、今の20歳以下のZ世代に、どんなバトンを渡してあげたいと思っていますか。
松島
今の20代以下のみなさんは、多分、生きてると22世紀を見る可能性がすごく高いですよね。
ただ一方で、22世紀の暮らしを全然想像できない私たちがいます。最初は想像できてないことが、何か、人類の想像力として前に進んでないのではないか、という問いなのかなとも思いましたが、最近は、これからの未来は都市と同じくものすごく自律分散型になっていて、1つの特徴的な未来ではなく、たくさんの未来、つまり「future」の複数形「futures」があるのではないかと考えています。
22世紀になったときに若い人たち全員が、複数形の未来描いたところにちゃんと行けたなって思えていたら、それが一番いいなと思っています。
谷川
それ、すてきですね。
僕は最近、スマート社会はグローバリズムの真逆に行くんじゃないかと思っています。グローバリゼーションに対する対極の価値や定義としてのローカライズ。物理的に自分が行ったことのない土地や知らない暮らしをしてる人たちと触れ合うことで、私たちは人の暮らしの中における多様性を感じ取ることができます。実は同じようなものを好きだったり、同じものを良いと思えるような人が、自分とは全然違う所に暮らしていたり。
そういう人と、時間と空間を超えてつながっていって、何かのタイミングにひょんなことで出会えたら、それはそれで、すごく楽しいと思います。その結果、今日も生きててよかったな、明日も楽しみ。こういう暮らしをエンジョイできてる自分は幸せだなって思える人が増えていけば、22世紀も良い世界になると思います。
目に見えないものを見えるようにするために、みんなが違う形でつながっていく、あるいは、つながってるものに自分もつながっていきたい、という意思をちゃんと顕在化できるような状況を、テクノロジーやデータで有益に掛け合わせていく。その結果、幸せだねっていえる状況をつくれるように、基盤の整備をしていくべき時期に今は来ているのではないでしょうか。