青山商事株式会社 様
コロナ禍により、在宅勤務やweb会議などビジネススタイルは大きな変革を遂げました。それに合わせてスーツやシャツ、ネクタイなど、従来のビジネスウェアに対する需要も変わりつつあります。
青山商事株式会社の「THE SUIT COMPANY(以下、TSC)」では、2020年10月ごろよりCCCマーケティンググループと新しい時代に求められるビジネスウェア開発に着手。3万人を超える生活者がプランナーとして企業や行政の課題解決に参加する共創コミュニティサイト「Blabo!」によるインサイト調査を活用し、2021年10月1日に「BORDERLESS STYLE」の新商品を発表しました。このたびは、そんな"生活者の声から生まれた新商品"の開発プロセスについてお話をおうかがいしました。
左から:
・TSC営業部 営業企画・マーケティンググループ サブマネージャー:東 史織 様
・TSC営業部 副部長:今井 康友 様
・TSC 商品部 副部長:藤長 淳 様
・TSC 商品部 レディス企画グループ マネージャー:知念 杏咲美 様
・TSC 商品部 レディス企画グループ長:坂下 恵 様
・TSC商品部 メンズ企画グループ サブマネージャー:中村 祐輔 様
(以下、敬称略)
生活者の本音から、もう一度"生活者目線"で企画を立て直す。
――今回、なぜ新商品開発に「Blabo!」を活用されたのでしょうか?
今井(SALES):
当社では、コロナ禍でワークスタイルやビジネスウェアに多様性が広がるなか、よりお客様の声を取り入れたメッセージ性のある商品開発プロセスが重要になると感じていました。新商品のリリースは一年後と定めていたので、すでにマーケットイン型の知見・知識・体制を整備し、商品を生活者ひとりひとりに訴求できる基盤を持つCCCとともに、「お客様の声を聴く」プラットフォームとして幅広い意見を性別の偏りなく集められる「Blabo!」を活用した商品開発に着手しました。
――実際に「Blabo!」で生活者から「ビジネスウェアのニーズ」を改めてヒアリングして気づきはありましたか?
坂下(LADIES'):
レディスでは数年前から毎シーズン新商品に対するアンケートを3か月~半年に1回のペースで店舗にて実施していましたが、そもそも当社を利用されていない方や普段からスーツを着られていない方も含めた意見を広く聴けたのは、今回が初めてでした。そこで出てきた意見は、今までの「TSC」にはない新しい商品が生まれる期待感がありました。
東(SALES):
レディスでは、「ポケットを増やしてほしい」というニーズが多かったことが印象的でした。私も新入社員の時に、リクルートスーツを制服代わりにしながら店舗で働いていましたが 、ペンやメモ帳、ハンコなど、接客に必要な 道具を入れるポケットが少なく 、代わりに支給されていたポーチ を腰につけていたことを思い返しました。改めて「Blabo!」で生活者のインサイトと向き合う事で、過去に自身も感じていた潜在的なニーズが想起され、一生活者の目線から自分事化して商品ニーズを捉えることができたように感じます。
藤長(MEN'S):
メンズでは、「Blabo!」で頂いたご要望の多くは、実は既存の機能でほぼ網羅できていることがわかり、改めて「今までの訴求がお客様まで認知されていなかった」という気付きがありました。だからこそ、お客様のニーズを商品に落とし込みながら、しっかりとそのメッセージを伝えていくことが重要だと感じました。
今井(SALES):
例えば、既存の機能として新商品にもついている「ハンドウォッシュ(手洗い)」について、コロナ前は「汗をかいたから/汚れたからで自宅で洗いたい」という要望が多かったのですが、「Blabo!」ではコロナ禍で男女ともに「殺菌をしたいから」というニーズ が高まっていることがわかりました。しっかりと生活者のニーズに届く伝え方を意識することの重要性を感じました。
「TSC」が提案する"新しいワークスタイル"を具現化する新商品
――「Blabo!」で集められた声からどのような新商品のコンセプトがうまれたのでしょうか?
藤長(MEN'S):
メンズ・レディースともに、共通したキーワードは 「"楽"」でした。メンズでは、着用した時の楽さ、ケア(洗いやすさ)のしやすさ、組み合わせの簡単さに加えて、「テレワークの運動不足でウエスト周りがキツい」や「外出先でマスクケースを忘れてしまう」などといったコロナ禍ならではの細やかなニーズも踏まえ、「家にいる感覚で身も心もリラックスできるスーツ」の開発に着手しました。
坂下(LADIES'):
レディスでは生活者のインサイトから、「ファッションで自分らしさを楽しみながらも実用面に重きをおいている」ことがわかりました。またオフィスウェアのカジュアル化が進む中で、今回のインサイトでも「なかなかオフでは使えない」という声があり、「オンでもオフでも 使える一軍服+機能性」をコンセプトに商品開発を行いました。
――具体的には、それらのコンセプトは、どのように商品へ落とし込まれていったのでしょうか?
藤長(MEN'S):
メンズでは、自宅のオンライン会議でもリラックスしながら参加できるよう、サッカーのスポーツウェアで採用されている生地を使用した「リ楽スーツ」を開発しました。さらに、より多様な環境に適応できるよう、同商品で襟の取り外しが可能な「トランスフォーメーションスーツ」のコンセプトの商品も開発しました。インサイトから見えてきた生活者の期待感の一歩先をいくように企画を進化させ、「TSC」が提案する"今後の働き方"を体現していく新商品になったと思います。
中村(MEN'S):
襟を取り外せる仕様は「THE SUIT COMPANY」としても、メーカー様にとっても初の試みでした。今回は襟を外した時をメインに開発していたので、メーカー様には他ブランドの商品を研究して何回も試作をあげていただきながら、テイラードの仕上がりも 完成度をも高めながら素晴らしい商品が完成しました。困難な注文にはなりましたが、メーカー様にも新しいチャレンジとして前向きに取り組んでいただきました。
坂下(LADIES'):
レディスでは当社でも数年前からカジュアルな素材やデザイン、またスタイリングで「オンオフ」で着られるビジネスウェアをお客様にご提案をしてきましたが、今回は、プラスのアイテムを揃えるのではなく、より手軽にスーツ自体が変化するという新しい切り口で、様々な生活シーンにマッチするスーツを開発しました。また機能面でも、予想以上に多かった「ポケットが少ない」という要望にも応えていきました。立ち姿の美しさを重視するスーツ屋のセオリーで、男性と比較すると面積が小さい女性のジャケットで大きいポケットを付けられなかったり、内ポケットがバストに影響したりと様々な制約もありましたが、積極的に意見を出し合いチャレンジすることで実現しました。
知念(LADIES'):
当然、様々な機能性を付け足せばコストがかかる側面もありますが...、お客様の率直なモヤモヤを前にして、「そうそう!こういうの欲しいよね!」とか「こういうのあるといいんじゃない?」と、お客様のインサイトが後押しとなって、私たち自身も生活者目線から意見を出し合い、今までの企画の立て方とは異なるプロセスで 攻めていけたのは、純粋に楽しかったという想いもあります。
今井(SALES):
だからこそ機能が詰まっており、コストパフォーマンスの良いお得なスーツになっています(笑)。
>「BORDERLESS STYLE」特設サイト :こちら
■共創コミュニティサイト「Blabo!」
3万人を超える生活者がプランナーとして企業や行政の課題解決に参加する「Blabo!」は「生活者の本音」からインサイトを導き出すための共創コミュニティサイトです。企業が知りたい内容を、生活者が回答しやすい「お題」として掲載。WEBサイトやアプリを通じて生活者の声を集めることができます。まさにその様子は、オンラインで行う企画会議のよう。自由でオープンな意見交換を通じて、生活者のインサイトを抽出し、本当に世の中に必要とされる商品・アイデアコンセプトメイクを伴走いたします。